【前回の記事を読む】相続財産4750万円を「3人で分割する」のが難しすぎたワケ

第四章 ポイントは不動産! 事例に学ぶ遺産分割における注意

2 リアルなトラブル事例2 安易な共有で後々問題が発生

【事案の概要】

・祖父は15年前に他界、その際、30戸の賃貸マンションを父(A)、叔母(B)、叔父(C)の3人で相続し、共有にした。

・A、Bは賃貸マンションから遠方に住んでおり、賃貸マンションはCが管理していた。

・賃料収入は経費を除いた純収益をA、B、Cの3人で等分していた。

・Cは5年前に他界し、その後、Cの持ち分は叔父の長男(D)が相続し、賃貸マンションを管理していた。

・Dが管理することになってから空室が増えてきた。Dは生活に困窮しているらしく、AのもとにDから以下のような要望が届きました。

1:Dの持ち分を購入してほしい。

2:持ち分を購入してもらえないなら賃貸マンションを一棟ごと売却し、その代金を分けたい。

この要望に対して、Aの意向は以下の通りでした。

1:Dの持ち分を購入してほしい。→ 現金余力がなく、難しい。

2:持ち分を購入してもらえないなら賃貸マンションを一棟ごと売却し、その代金を分けたい。→ 賃貸マンションの敷地は先祖代々引き継いできた土地であり、その土地を第三者に売却するわけにはいかない。

Aは近年物忘れが多くなっており、大きなお金が関係する話は心配であることから、Aの長男(E)が代理として対応することになりました。そこでEが叔母であるBに相談したところ、BもAとほぼ同意見であるが、年齢のこともあるので交渉はEに任せたいとのことでした。

Eが現地の賃貸マンションに行ってみたところ、立地は良好ですが、建物の共用部分は荒れており、壁面も塗装の剥がれや錆があるなど、維持管理状態は劣悪なものでした。そのためEは、近年の空室の増加はDの維持管理に問題があると考えました。

DとEはいとこ同士の関係になりますが、10年以上ぶりに再会し、話し合いをすることになりました。双方の言い分は以下の通りでした。

・D→E

賃料収入が減ってきており、生活が苦しい。賃貸マンションの持ち分を買い取ってもらえないのであれば、第三者に売却するしかない。共有持ち分の売却は難しいので、一括売却したい。

・E→D

そもそも賃料収入が減っているのはDによる維持管理が悪いから。あまりに勝手すぎる言い分であり、父の意向も考えると売却には同意できない。

いかがでしょうか。このようなケースでは訴訟(共有物分割請求訴訟)にまでいたることも考えられ、最悪の場合だと競売によって第三者の手に渡ってしまうこともあります。そうなるとA(E)とBにとっては泣き寝入りするしかないわけです。