エピローグ

 

ホレーシオ 川の流れを せき止めることはできない

渦巻く流れは あらゆるものを押し流し 海に至るまで止まらない

運命のまま、ついに王子ハムレット様は父上の仇(かたき)を打ちます。

けれど、国王の策略によってハムレット様も命を落とすのです。

侍女  王妃様もお亡くなりになり、デンマークの王室は絶えました。そしてオフィーリアさまにも悲劇は襲いかかります。お父上、内大臣閣下が命を落とされたのです。

ホレーシオ ハムレット様が、王妃様と話されていた時です。壁掛けの陰に隠れていた内大臣閣下を国王だと思いこまれ、刺してしまったのです。

侍女  愛する父上を亡くされたのです。それも、恋人ハムレット様の剣によって……。オフィーリアさまの心は この世のものではなくなりました。ある日、花かんむりを編もうとして、川の流れに落ちて……それがご最期でした。

ホレーシオ 神のご加護もなく、愛し合っていたお二人は運命に引き裂かれ、結ばれないままそれぞれあの世へ旅立って行ったのです。

侍女  天国へ召されても、オフィーリアさまはこの世におられたときのように美しい花を摘まれているのでしょう……。

ホレーシオと侍女は、客席に向かって黙礼し、立ち去る。

音楽(「花言葉と狂気の正気)。オフィーリアが走り出る。

オフィーリア  思い出の花ローズマリーはどこ?

貞淑で忠実なスミレはどこ?

ローズマリー 花言葉は 変わらぬ愛

恋人の まことの心 まことの愛の 見極めを

あの人は あの世に去りぬ あの人は はかなく去りぬ

どこなの どこなの デンマークの美しいお妃様は?

……あなたには悲しみ悔いるヘンルーダ 安息日には恵みの花

忠実なスミレもあげたいんだけど

お父様が亡くなったとき、みんな萎(しお)れてしまったの

幸せなご最期だったんですって

思い出の花ローズマリーはどこ?

貞淑で忠実なスミレはどこ?

音楽(「花言葉と狂気の正気)の後奏とともに、オフィーリアは走り去る。舞台溶暗。

完。

【引用参考文献】シェイクスピア全集「ハムレット」小田島雄志=訳(白水社)

※本記事は、2019年8月刊行の書籍『雪女とオフィーリア、そしてクローディアス』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。