【前回の記事を読む】自分を苦しめる“こうあらねば思考”…解決の方法は「ジャッジをしないこと」

第1章 般若心経「(くう)」的生き方の智慧

ご縁は“根ットワーク”

僕は、趣味でワイヤークラフトをやっています。おかげさまで売上は累計900品を超えました。クラフトを始めたのは6年前。きっかけは友人が営むcaféに行った時。店内に飾ってあったコーヒーカップとポットの組み合わせオブジェがあまりにも素敵で、「俺も作ってみたい」と思ったのがクラフトとの出会いでした。

僕はcaféを出たあと、その足でホームセンターに行き、針金を買って帰りました。そしてその熱が冷めぬうちに、早速猫のオブジェをつくることに。好みのイラストをネットで選んでプリント。その上からなぞってつくりました。自分で言うのも何ですが、思いのほか上手にできました。

それから僕はクラフトにハマりました。各種オブジェ、クリスマスのオーナメント、ドライフラワーベースなどなど。つくっていて面白いのは実用的なものと分かり、途中からティッシュペーパーケースやトイレ設置用のペーパータオルケースをたくさん製作するようになりました。

僕は自分のこと、決して器用な方だと思っていません。ただワイヤーで工作することについては、鉄道会社に勤めていた時の経験が活かされています。それは電車の修繕で、鉄を曲げたり溶接していたりもしていたので、ワイヤーをどのようにしたらキレイに曲げられるか。仕上げはどのようにしたら美しく見えるか。少なからずその時の加工の手慣れが素養になっていると思います。

「自分がやってきたことって、無駄じゃないか」と思いたくなる時がありますよね。たとえば前職と全く関連性の無い仕事に転職した時とか。

そんな時は、植物の根っこを想像してみてはいかがでしょう。植物の根っこは地中でネットワークされています。したがって芽が地表に出るまで、どこからどこに向かって根が伸び、どこから芽が出るか分からないですよね。しかし自分が植えた植物は必ずどこかに向かって伸びています。そして芽が出た時にはじめて、「あのできごとは、ここでこう繋がったんだ」。その経路を悟ります。そして出た芽を育てていけば、さらにその場所で花を咲かせることもできます。それを“ご縁”といいます。

先のクラフトの話に当てはめれば、サラリーマン時代の経験がまさかこんな形で活かされるとは全く想像もつきませんでした。地中で根っこが繋がっていたのです。

僕は今年で還暦を迎えますが、人との繋がりも含め、すべてはご縁で成り立っていると思っています。地中で張り巡らされている根っこネットワーク、シャレを被せて“根ットワーク”と呼んでいます。それにより生かされていると思っています。そしてこれからの人生も、過去に植えたタネがどこで発芽するか楽しみです。これ、般若心経エッセンスの一つ“諸法無我”です。つまりそれは“ご縁”を読むことです。

何かにつけ頑張ることは大事。だけど“根ットワーク”されてなければ、繋がりません。結果が出ない時はそう思って諦めます。諦めるとは、仏教では「明らかにする」こと。「諦め」が「明らめ」になると、受けるニュアンスとしてもスッキリしませんか?

植えた植物の先を想像してみましょう。あるいは過去に植えた植物が、現在の自分にどのような経路を辿って繋がっているか、見てみるのもいいかもしれません。