第2章 自分軸な生き方の智慧

その解決のために一歩、踏み出してみませんか?一歩踏み出したからといって、翌日からすべてが変わるなどとは言いません。しかし、その小さな一歩が、これからのあなたを大きく変えるきっかけとなるとしたら、決して小さな一歩ではないはずです。僕にとって絶縁という一歩は、何をおいても自分を優先する。そして尊重する決断。言わば小さな「独立解放宣言」でした。

守ってあげられなかった想い

家内のきみこさんは、過去に二つ大きな病気を患いました。一つは卵巣と子宮の腫瘍。もう一つは鬱病。前者は悪性の疑いがあったので、手術により卵巣と子宮を全摘。後者は彼女自身がそれをきっかけにしていろいろ学び、独自で克服しました。

僕はそれらを患った本当の原因を知っていました。それは嫁姑問題に端を発した心労。家内は元々明るくてとても優しい性格。細やかな気遣いもできる人です。「これを言ったら相手がどれだけ心配するだろう」。(おもんばか)ることができる人です。そんな気質だっただけに、彼女が「死にたい」と連日はっきり口にしていた時、僕は彼女の心が限界点に達していることを悟りました。

なのに、その時……、僕は彼女に対して何もできなかった。守ってあげられなかった。

「俺と結婚しなければこんな辛い思いをさせずに済んだのではないか」

「俺は彼女にこれから何をしてあげられるのだろう」

以来、僕は家内に対し罪悪感を抱えることとなりました。いっそのこ「離婚することが、彼女を救う唯一の方法ではないか」とまで思うようになりました。

その後、新居を購入し、同居していた親とは別居しました。少し関係は改善したかに見えましたが、結局従来の構図は変わらず。そればかりか母のエゴはますますエスカレート。

以前にも増して振り回されることに。そして7年前、絶縁に踏み切りました。そのきっかけとなったのは、家内に対する母の依存圧力が一段と強くなって起きたあるできごとでした。

「このまま行ったら彼女はどうなるだろう?」。直接的な引き金とはならないまでも、それがもし最悪に結びついた時、僕は「これ以上の罪悪感に耐えられるだろうか?」。そしてその時「“これも彼女の運命だった”で、片付けていいものだろうか?」「もし今、守れる手立てがあるなら、それをするべきではないのか?」「今度こそ守らなければ」そんな思いが錯綜(さくそう)し、僕はついに決意を固めました。

これ、以前の僕だったらできませんでした。ガチガチに固まっていた固定観念を手放すことができたのも般若心経エッセンスのおかげです。