【前回の記事を読む】“もち麦”とは違う?日本生まれの“もち小麦”の知られざる魅力!

第一部 もち小麦を食べる編

第2章 もち小麦は食べやすい

もち小麦は歯にくっつかない

もち小麦が誕生して20年あまりが経ち、今では食品加工の研究が行えるまで栽培されるようになりました。しかしまだ普通小麦の生産量からすれば微々たるものです。ただ、普通米ともち米の栽培割合からすれば、同様のバランスがよいのかもしれません。

ある程度もち小麦が栽培されるようになった頃、お餅に加工して食べてみましたところ、普通のお餅とは異なる新たな食感に驚きました。ひと言で申しますと、うどんのツルツルしたのど越し感と、それでいてお餅のソフト食感なのです。この言葉は筆者の口癖です。しかし、当時は、もち小麦の特性が食感にどう関係するのかは気付きませんでした。

徐々にもち小麦の食感に興味をもち、さらに研究を進めました。当時、三重県で勤務していまして、県の地域振興事業助成をはじめ研究助成金をもとに研究を続け、2000年には伊勢神宮近くにあります志摩観光ホテル(当時の総料理長宮崎英男氏)のご厚意により、もち小麦の料理、パン・菓子類を総料理長のセンスで試作いただき、もち小麦に関係する方々を招いて、“もち小麦研究懇談会”を企画しました。

メニューは、フランス料理のライトコースで、写真はそのときのメニューです。メニュー全てにもち小麦を使用し、また試食用に幾種類かのケーキ、パン、パスタもご準備いただきました。

志摩観光ホテルは、皇族が伊勢神宮へ参詣時に宿泊されるホテルであり、アワビのステーキ、伊勢エビのスープで超有名なホテルです。

シェフが素材をうまく活かされるので、もち小麦でなくとも美味しいのかもしれませんが、参加者アンケートでは“もち小麦は食べやすい。美味しい”との回答をいただきました。もち小麦のソフト感をはじめ新たな食感を味わっていただけたことには間違いありません。

この試食会の後、三重県津市にあります、“料理の鉄人”出場、後藤雅司オーナーのフランス料理レストラン“ラ・パルム・ドール”で、ミルクレープを開発いただき、地元のデパートで期間限定販売しました。数年後には、後藤オーナーのアドバイスで、松阪市でもち小麦を使用したパンケーキのお店もオープンしました。

写真を拡大[写真1]もち小麦のコースメニュー
[写真2]鮑のソーセージ ブリオッシュ包み
[写真3]オレンジケーキ