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第4章 もち小麦はバリアフリー

スマイルケア食

日本は超高齢社会となり、健康で長寿の方が増えています。これは厚生労働省がすすめる健康増進施策もあると思います。健康の3要素は栄養、運動、休養といい、なかでも食生活は重要です。しかし歳を重ねるうちに、食べる力、消化力、吸収後の代謝など、身体機能は衰えていきます。食べる力を補うように、たくさんの介護食品が開発されています。

もち小麦は、日本をはじめ東アジアの人々の粘性食品の嗜好(第9章参照)、そして高齢者のお餅嗜好から考えても、QOL(生活の質Quality of life)の向上、また医福食農連携(医療、福祉、食料、農業の総合的な連携)を実現する福祉食品としての応用が期待できる食材です。

“スマイルケア食”をご存じでしょうか? これは、医福食農連携をすすめる農林水産省が2016年からはじめた福祉政策のひとつです。スマイル食では、これまで“介護食”と呼ばれてきた範囲を、

○ 噛むことや飲み込むことが難しい人々の食品

○ 低栄養予防やフレイル(健康な状態と介護が必要な状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下がみられる状態のこと)予防につながる食品

○ 日々の生活をより快適にする食品

という広い領域として捉え、これら3つの領域を合わせて、幅を広げた新しい介護食品を“スマイルケア食”として提案し、国が高齢者食の枠組みをわかりやすく整理したものです。スマイルケア食は、3つに分類されています。

① 青色マーク・自己適合宣言健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品(フレイル予防、低栄養など、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品)( 1段階:スマイルケア食)

② 黄色マーク・噛むことに問題がある方向けの食品(そしゃく配慮食品JAS規格)( 4段階あり:スマイルケア食2~5)

③ 赤色マーク・飲み込むことに問題がある方向けの食品( 3段階あり:スマイルケア食0~2。厚生労働省嚥下困難者用食品許可基準に準じた区分)