彼は私をじっと見つめていた。

「何でしょうか」

「いや、拾った子犬も役に立つなと思ってな」

「子犬、私そんなに可愛くないです」

「沙優は可愛いよ」

彼の言葉にドキっとして顔が真っ赤になるのを感じた。しかも沙優って呼び捨てにされて久しぶりにキュンとしてしまった。

「顔が赤いぞ、まだ熱でもあるのか」そう言って彼は私のおでこに、自分のおでこをくっ付けてきた。

「だ、大丈夫です、ちょっとドキドキしただけです」

「ドキドキ?」

「いきなり沙優って言うから」

えっ、何、またじっと見てる、何で。そんなに見つめられると恥ずかしいのに、私は俯いた。

なんだ、この気持ちは、拾った子犬のように放っておけない、すぐに真っ赤になるピュアなところ、ちょっと顔が近づいただけで、ドキドキすると言って俯く、なんて可愛いんだ。俺は抱きしめたい衝動に駆られた。そして沙優の手を引き寄せ抱きしめていた。

沙優は小刻みに肩を震わせ驚いた表情を見せた。そして俺の胸を押して離れた。

「南條さん、彼女いるのにこんなことをしたら駄目ですよ」

「でも沙優は俺の婚約者だ、だからこんなことも構わないと思うけど……」そう言って俺は沙優を引き寄せ、キスをした。沙優も言葉では駄目と言いながら、俺のキスを受け入れた。

「風邪がうつっちゃう」

「大丈夫だよ」