【前回の記事を読む】バイクの免許を取りたい「いじめられっ子」に父から奇跡の一言 …

エンジンもあったまってきたな

10 今からバイクの免許取得を目指す私に一言お願いします。

① 10 > おっ、素晴らしい。ガッツリ通えば2週間ぐらいで取れます。頑張って。

兎にも角にも親の許可を得た俺は両親の、特に母親の気が変わらないうちにさっそく教習所へ申し込み。優人も誘って優人自身も少しその気になっていたが、結局最後は親……主に母親に反対されて断念した。

一人息子だし、基本的には校則違反になるわけだから優人の両親の判断は当たり前と言えば当たり前だった。自動車教習所に行く前日、俺は優人に買ったばかりのヘルメットを見せに行った。

「明日から教習所なんだ。免許取ったら本当はダメだけど後ろ乗せるからどっかに行こうよ」

テンション高めに1人喋りまくる俺を優人は少し寂しそうに見ていた。俺が教習所に入った時期は5月の下旬だった。万が一いや、億が一にも学校や同級生にばれるわけにはいかないので、教習所はもともと田舎のさらに奥地の教習所へ通う事にした。

5月も終わりかけの教習所という事で教習所の生徒は俺を含めて4人。そのうちの1人の松下さんという人とは仲良くしてもらった。初めは一方的に話しかけられてコミュ障の俺はどうしていいのかもわからなかったが、それでも松下さんはお構いなしに俺に話し続けた。

年齢は60過ぎだったが、見た目は実年齢よりもはるかに若く見えた。松下さんは長年勤めていた仕事を早期退職して今は個人で商売をしているという事だった。奥さんとは数年前に死別。子供も独立して金銭的にも時間的にも余裕ができてきたので年齢的にも最後のチャンスと思い、娘息子の大反対を押し切って昔からの夢だった大型二輪免許を取りに来たという事だった。