すでにバイクも予約購入していて、よく俺に画像を見せながら免許取ったら北海道に行くとか、アウトバーンに行きたいとかって話していた。松下さんとは一緒にバイクショップに行ったり、ラーメンを食べに行ったり、時に教官への不平不満を言ってお互いを励ましあいながら仲良くなっていった。

そして俺にとって忘れられない体験。100回生まれ変わってもきっと忘れない。俺は生まれて初めてバイクに乗った。あのときの事は十数年経った今でも鮮明に覚えている。教習所のバイクは長年使いこまれたボロボロのCB400、時速は60kmしか出せない仕様になっていて、教習所内のコースも基本的に時速40kmが上限速度だった。

それでも俺は今までに感じた事のないスピードに感動した。体に当たる風、エンジンの音、ハンドルの重さ、路面の凹凸をダイレクトに伝える振動、圧倒的な疾走感、カーブを曲がるときの恐怖感。何もかもが感動的で、今までの自分の人生のすべての価値観をぶっ壊されたというか、全く別の何かに生まれ変わったというか、とにかくこのときの感動は俺の拙い文章表現力ではとてもじゃないが100分の1もみんなに伝えられないと思う。

4 ①のエンジンもあったまってきたなww

11 追いついた& 支援。俺もバイクに乗っているから①の気持ちはめちゃくちゃわかるぜ。

12 初めての乗り物がバイクなら余計に早く感じるかも。私はスクーターが初めての乗り物だったけど、同じ時速40kmでも車や電車とは体感が全然違ってものすごく速く感じた。

① どうして俺がこのとき、こんなにも感動したのか、今になって考えてみると、多分俺の心の中に『速さ』に対しての憧れがあったんじゃないのかなって思う。とにかく運動神経の鈍かった俺は走る、跳ぶといった運動系は勿論だが、工作や勉強、普段のちょっとした行動、動作にもキレというものがなく、サラブレッドの中に放り込まれたロバの気分というか、周りに対してコンプレックスを感じていた。

優人が「モテる奴には理由がある」って言っていたが、『速さ、キレ』っていうのも、かっこいいって思われる大きなセールスポイントだと思う。

※本記事は、2021年10月刊行の書籍『タンデム』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。