白龍は身体から黄金に輝く光を放ち、清姫と紗久弥姫をその光の輪の中に入れた。その横を赤龍が通り、羅技姫は白龍に深くお辞儀をした。

「仇打ちは阿修の保繁一人のみぞ!」

「はい。保繁一人が仇でございます」

白龍の問いに、羅技姫は強い意志をにじませ答えた。青龍、紫龍、羅技姫を背に乗せた赤龍達は龍神(たつ)(もり)の里に飛んで行くと、阿修の者どもを里より追い払いにかかった。阿修の保繁と兵達は、朝日が昇って辺りが明るくなった途端、急に薄暗くなり、龍が現れて襲いかかって来たため、着の身着のまま慌てて逃げ出した。羅技姫は馬に乗って逃げる保繁を見つけると、赤龍に仇の保繁を教えた。

「両足でしっかりと余に摑まれ!」

 

龍は言うと、身を大きく翻し、馬に乗って遥か先に逃げている保繁を凄い勢いで追った。羅技姫は腰に携えている剣を抜くと、保繁の首を一太刀で刎ねた。そして、剣を鞘に納めず、赤龍と共に白龍の元へと戻った。赤龍の背から降りると、白龍の前に跪き、保繁の血糊が付いた剣を掲げた。

「父上様と里の武人達の仇を討ち取って参りました」

白龍は羅技が掲げた剣を受け取り、そして返り血を浴びた羅技の領巾をさらりと払い取った。

「返り血を浴びたその領巾にはやるべき役目がある」

「えっ?」

 

羅技姫が事態がのみこめず困惑していると、「これからは女子としてどうどうと生きよ!」と微笑み、羅技姫に手を翳すと、羅技姫の髪をこうけいの髪型に変えた。

 

「まあ!」

清姫が感嘆の声をあげると、「とっても綺麗~」と紗久弥姫も続けた。

「か、髪の毛が引っ張られて痛い……」

突然、全身の力が抜けて倒れ込んだ羅技姫を、清姫は抱きかかえた。

「ら、羅技?」

「可哀そうに……。今まで男として生き、随分苦労して来たのだろう。身体と心は一時たりとも気が休まることがなく、仇を討って一気に力が抜けてしまったのだ」

と白龍は言った。