外伝二の巻 鳳炎(ほうえん)(こう)(りゅう)の愛

「兄上様、さあ参ろう!」

「感謝する! さあ、千世。余の身体の中へ入るのじゃ」

千世は黄金色に輝く光に包まれ、鳳炎昴龍の身体の中へ入った。

「紗久弥、そちも余の身体に入れ!」

「嫌よ! 私は龍体の青龍様の背に乗れるのよ!」

「そうであったな! 天のお住まいとされている最上殿まで、鳳凰の雛を観に行ったことがあるな! では参ろうか」

青龍は龍体に変化すると、紗久弥姫を背に乗せて最上殿へ昇って行った。

それから数日が経ち、龍王殿に一行が帰って来た。千世の足は治らなかったが、鳳炎昴龍の身体は以前の凛とした美しい姿に戻っており、そのあまりの美しさに、集まった者達は言葉を失った。

「兄上様。余は龍王の座を兄上様にお譲りしたいと存じます」

「いや、余はあの北天の地にて千世と静かに暮らしたい。そなたこそ龍王に相応しい。白龍殿という立派な後継ぎが居られるし、御孫殿も出来た。余は早々に館へ帰ろう。館では従者や天女達が今か今かと帰りを待っておるからな」

鳳炎昴龍は龍王の申し出を断った。

「龍王様! 鳳炎昴龍様の館に行き来させて下さいませ」

羅技が口火を切ると、紗久弥姫も続いて言った。

「わたくしも行きたいわ。鳳炎昴龍様の館にあるお庭にはとても綺麗な花園が在るのよ! 地上界のお花が咲いていて、まるで龍神守の里と同じお庭なの」

「千世が喜ぶだろう、と地上界に咲く可愛い花を選んで余が植えたのじゃ。本来なら許されないのだが、天の御計らいで特別に許可を頂いた」

鳳炎昴龍が優しい眼差しをして答えると、

「わたくしはお花が大好きです! それも地上界のお花だなんて!」

幸姫が目を輝かせた。

「わたくしも行ってみたいですわ!」

清姫も賛同すると、

「やれやれ。余の皇子達の妃殿には逆らえぬ。兄上様、如何致そうか?」

龍王が半ば呆れて尋ねると、羅技が鳳炎昴龍の顔をじっと見つめ、

「羅技姫が睨んでおるぞ……」

四人の姉妹は鳳炎昴龍に抱き付き、喜んだ。

千世はその様子に圧倒され、赤龍と紫龍はそれぞれの妃の身体を心配しておろおろと姫の後を付いて回り、青龍は慌てて紗久弥姫を引き離した。その後、龍王殿には暫く笑い声が轟いた。