【前回の記事を読む】返り血を浴びる人生に終止符を。「女として堂々と生きよ!」

羅技姫、敵討ちへ

「羅技……」

「姉上様~」

二人が呼びかけると、羅技はふっと目を覚まし、同時に全身が震え出した。

「我は今まで、獣やそと人から里の民を守る為にと数多くの獣の命を奪った。しかし、人を殺めたのは初めてじゃ。今までは威嚇しては多少の傷を負わしたことはあったのだが……。父上や里の武人達の仇だといえ、我は罪深いことをした。身体の震えは神の罰を受けたのであろう……。真、人の命を奪うというのはとても重く苦しい……」

「そなたが仇打ちをしたことで里の父上達の魂は成仏出来たであろう。人を殺めたと申しても仇の保繁一人のみ。阿修の兵は誰一人、傷を負うこともなく、命を落としてはおらぬ。そなたの身体の震えは暫くすると治まるであろう」

白龍は言った。

「そなたには数々の辛く苦しい思いをさせて来ました。私達を守ってくれて何と礼を申して良いか……。御父上様はそなたが女性の衣を着ている姿を一目見たいとこっそりと寂しそうな顔をされ、目に涙を浮かべられ、詫びておられました」

清姫は羅技姫をやさしく抱きしめた。