私は今、こうして放送局の一職員として働いていますが同じように他のマスメディアにも多くの全共闘世代が入り込んでいます。彼らの多くは日本を、その文化をとにかく忌み嫌っています。そしてアメリカに対する気持ちはとにかく憎い、の一言です。それでいながらアメリカの押し付けた日本国憲法はおとなしく順守しようとしています。際立った二律背反(にりつはいはん)といえましょう。

彼らに言わせれば、日本国憲法は戦前の帝国憲法に比べればはるかに平和、人権、民主性に富んだきわめて良質の憲法だそうです。しかしその実態はといえば日本人弱体化をもくろんだ産物以外の何物でもない。でも、一度全共闘に身を置いた一人として、私は保守陣営に敵対の姿勢をとるしかないと思っています。

マスメディアに身を置いてはいるものの、どうしても日本の、それも権力を保持しているものへの敵愾心は容易に消えそうもありません」

秋山プロデューサーは饒舌(じょうぜつ)にことを述べると私の反応を待った。

「いやー、実に気持ち良く思いのたけを言われましたなぁ。全共闘の生き残りにもいろいろなタイプがあることがわかりました。いや、これは皮肉を言っているのではない。あなたの考え、悩み、諸々の葛藤に正直胸を打たれました」

私はそう言って、秋山を(ねぎら)った。

※本記事は、2021年5月刊行の書籍『マルト神群』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。