合同ティームの宿す光

そして、秋の全国大会県予選、花園予選と言われる県大会の初戦は、横須賀にある(なつ)(しま)高校と対戦することになっていた。佑子たちが葉山高校の頃、夏島高校にはラグビー部はなかった。葉山高校から異動することになった、恩師の山名が立ちあげたラグビー部なのだ。

すでに山名は夏島高校からは異動しているが。

十月の声を聞いてすぐの日曜日、ラグビー部のメンバーが降り立ったのはシーサイドラインという新交通システムの駅だ。なぎさグラウンドは人工海浜に隣接した、海風の渡る快い公園の中にある、天然芝のグラウンドだ。

「足立、ありがとな」

ユニフォームを身に着ける前、まだTシャツでのアップメニューが終わったところで、龍城ケ丘のキャプテンが、足立くんに声をかけた。足立くんは、ちょっと驚いた顔で視線を合わせる。

「お前たちが、合同でやってくれたから、オレたちは最後の大会に出場できたんだ。正直言って、オレたちも、花田のおっさんも、きちんとこの大会で幕を下ろすことができるんだ。楽しかったよ、合同ティーム」

「でも先輩、まだ終わってないッスよ」

戸惑いの中で、足立くんは言う。受けいれてくれて有り難い、それは大磯東の方が感じる恩義だろう。でも、龍城ケ丘のキャプテンは言うのだ。

「この、先輩たちも身に着けていたユニフォームを着て、ラストの大会のグラウンドに立てるんだ。お前たちは、自分の学校の名前じゃないユニフォームで、不本意かもしれない。でもな、オレたちは、このジャージを着てここにいられることが、すごく嬉しい。今日は、やるぞ。ついて来てくれ」

いつの間にか、二つのティームのメンバーが、二人を取り囲む。みんなが頬に笑みを浮かべながら、でも、目の輝きは真剣そのものだ。佑子は思う。あの頃と同じ。

あの子たちが宿す光。真っ直ぐで、馬鹿みたいに余裕がなくて、でもその分迷いもない。

砂浜の、戸惑いの中でスタートした大磯東の少年たちは、輝きを獲得しつつある。

「和泉先生」