②ベンプロぺリンの添付文書での表現

その他の副作用欄を見ますと、確かに頻度不明のところに聴覚異常の記載があります。

写真を拡大 [図表2]ベンプロぺリンのその他の副作用

③その他の中枢性鎮咳剤の聴覚異常関連の副作用は

次に、その他の中枢性鎮咳剤でも同様の副作用が報告されているかが気になるところです。しかしパスカラニュース213号で取り上げた以下の中枢性鎮咳剤のいずれも聴覚異常関連副作用はありませんでした(2019/11現在)。

(1)麻薬性鎮咳剤:モルヒネ、コデインリン酸塩

(2)非麻薬性鎮咳剤

a.モルヒナン構造系:デキストロメトルファン(メジコンⓇ)、ジメモルファン(アストミンⓇ)

b.非モルヒナン構造系:ノスカピン(アストーマⓇの一成分)、チペピジン(アスベリンⓇ)、クロフェダノール(コルドリンⓇ)、ペントキシベリン(トクレスⓇ:発売中止)

どうやら聴覚異常はベンプロペリン特有の副作用になるようです。他の要因もあるかもしれませんが、薬をやめると回復した例が3例中2例あることから、ベンプロペリンの可能性を否定できません。そこで本成分がどのような形で聴覚異常を起こすかを私なりに考えてみました。

④聴覚に関わる神経系

今回の副作用は音が高く聞こえたり、低く聞こえたりするということなので、人間の持つ音の周波数の聞こえ方に関連すると考えられます。ガイトン生理学(2018年)によれば、周波数の違いを感じるのは図表3のような過程になるそうです。

写真を拡大 [図表3]音の周波数を感じわける神経系