その子が、佑子の所にやって来たのは、翌日のことだった。

「先生、マジ、むかついてるんッスけど、あの、なごみって何者?」

「何者って、ラグビー部員だよ。すごいでしょ、あの走り」

「オレさ、ここんとこ何んもやってなかったからなまっちゃってたかもしんねえけどさ。負けたままはヤなんだよね」

佑子はすっとぼけることに決めた。

「じゃあ、どうするの?」

「オレに、ラグビーやらせろよ」

「二年生だよね、名前は?」

「カザマ。風間勇気(かざまゆうき)。なごみに、待ってろって言っといてよ」

翌日の練習の時、サッカー部の方から怒鳴り声が響いてきた。活動の始まりに遅れてきたのは、佑子もサッカー部の山田先生も同じだ。臨時で会議が入って遅れてしまったのはどうしようもない。ただ、ラグビー部は足立くんのリーダーシップで、狭い場所でもそれなりの活動を開始していたのだ。

一方のサッカー部は、何だか締まりのないボールの蹴り合いを漫然とやっていたらしい。そこに、山田先生のカミナリが落ちた。

「もうさ、支配されるのヤなワケ」

彼は足立くんに言ったのだ。

「ビー部はいいよな。優しい先生が面倒見てくれて」

「じゃあ、お前もこっちに来ればいいじゃん」

足立くんはそれだけ言って、同じクラスの今福(いまふく)くん、サッカー部の正ゴールキーパーをスカウトしたのだ。正直言って、佑子は気が重くなる。部員を横取りされた、って、山田先生が思っちゃったら困るな、と。でも。

「扱いにくいのが、そっちに行くって言ってますけど、頼んでもいいですか?」

とりあえず、山田先生は佑子には申し訳なさそうに言う。対先生という点ではタテマエ的にはどうにかなりそうだけれど、今福くんは言うのだ。

「でもね、ビー部に入ったでしょ、風間。オレ、あいつ大っキライなんだけど」