第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-3 技術と経済

1.技術が経済を変える

「技術が経済を変える」といっても過言ではありません。第I部で見てきたように、新しい技術の開発が新しい産業を作り、生活を豊かにし、経済を成長させてきました。

近年では、金融におけるお金の量が著しく増え、物やサービスの流通などの「実体経済」に対して、「金融経済」と呼ばれるものも大きくなりました。このような金融経済が、技術とどう関係しているかについても考えてみたいと思います。

一方、経済活動に組み入れられない自然や社会への影響が、公害や地球温暖化問題を生み、後世にツケを残してきました。このような「技術の社会的費用」についても考えておきたいと思います。

2.企業の技術開発

第Ⅰ部で見てきたように、技術の開発によって新しい産業が生まれ、人々の生活のなかに取り込まれ、社会生活が豊かになるとともに商品の売買が成長し、消費が拡大し、「経済成長」と呼ばれる生産、消費、貯蓄の増大が起こってきました。したがって、技術の進歩は社会を豊かにするとともに経済成長を引き起こしています。

資本主義経済において、新しい商品を開発し、販売するのは企業です。そこで、まず企業が技術開発を進める動機から考えてみましょう。

写真を拡大 [図表1] 資本主義とは

資本主義とは[図表1]のように、資金を集め、それを用いて生産手段を私有し、労働者を雇って何らかの事業を行い、収益を上げることを目的としています。まずメーカーは[図表2]のように、集めた資金を基に生産設備を購入し、労働者を雇い、原材料や部品を購入して製作や組み立てを行い、商品を生産します。そして、その商品を販売して売り上げを上げます。

この売り上げから材料や部品の購入代、労働者への賃金、生産設備の購入費のうちその期間に消耗した分(減価償却費)などを払った残りが収益となります。この収益のなかから株の配当や税金、新しい設備への投資、そして研究開発費を捻出します。

写真を拡大 [図表2] 企業(メーカー)の生産活動

企業が収益を上げる方法には[図表3]のように、(1)工場を増やして生産を増やし、売り上げを伸ばすこと、(2)人件費の安い国で生産を行って商品価格における労賃の支払いを減らし、価格を下げて販売を増やすこと、(3)生産設備の革新などで単位時間当たりの生産量を増やし、労働生産性(投入した労働量に対する生産量)を上げること、(4)新しい商品や他がまねできない商品を生産して、販売を独占して優先的な利益を上げることなどがあります。

まず、新しい商品が発売され、それに対する需要がマッチングしていれば、商品の販売が指数関数的に増大します。それに合わせて生産規模を拡大し、収益を増やすことができます。自動車やテレビ、パソコン、携帯電話の普及など、新しい製品への需要が確立してくると、急激に消費が増大していきます。

しかし、消費者の数は限られていますから、その商品が皆に普及してくると、まだ購入していない人の数は急激に減ってくるので新規に購入する人の数は減り、買い替えの需要に変わって一定の需要に収束してきます。つまり、いずれは収益が下がってくることになります。

写真を拡大 [図表3] 企業の収益拡大の方法
※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。