テトラサイクリン系抗生物質の副作用例

慢性疲労症候群という珍しい病気の患者さんの症例検討からの話になります。筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)とも呼ばれ、原因不明で対症療法しか治療法がないとされています。感染症をきっかけにして発症する場合もあり、今回の患者さんには今までに3種類のテトラサイクリン系の抗生物質が処方されていました。しかし、その中でも副作用が出ており、投与順に記載すると次のようになります(図表1)。

[図表1]テトラサイクリン系による副作用発症状況

①ミノサイクリン

最初に投与されたテトラサイクリン系抗生物質で3日間続く強いめまいがあったそうです。中枢へも移行する薬のため中枢での通過傷害としてめまいを引き起こした可能性があり、機序分類の薬物毒性型としました。投与期間は短いですが、薬理作用や薬物過敏では説明がつかないことも判断材料となります。

②テトラサイクリン

ミノサイクリンで副作用が出たために第2のテトラサイクリン系薬剤が処方されましたが顔に発疹が出て、かつめまいやろれつが回らない症状が出ました。発疹は明らかに薬物過敏症のアレルギー型の副作用と判断できます。同じ骨格系のミノサイクリンが抗原となって交差アレルギー反応が発生したと考えられます。めまい等の症状は、ミノサイクリンと同様に脳内に移行して中枢へ悪影響を与えた薬物毒性型と考えました。

③ドキシサイクリン

テトラサイクリンで副作用が出たので第3のテトラサイクリン系薬剤が処方されました。軽い下痢が出て、整腸剤のミヤBMで症状が改善されたことから、本剤の本来の薬理作用である抗菌作用が腸内細菌叢をかく乱して下痢を引き起こしたと考えられるので、下痢の副作用は薬理作用型と判断できます。

以上のようにこの患者さんに起こった副作用の機序別分類をしたつもりですが、奇妙な点に気が付きます。②テトラサイクリンによるアレルギー性副作用が本当であれば、③ドキシサイクリンを投与した際も構造が似ているので似たようなアレルギー性副作用が起きても不思議はないはずです(図表2)。

[図表2]テトラサイクリン系の構造式