重大な副作用から見える薬の性質

重大な副作用とは添付文書での表現ですが、その症状を放置すると死亡や障害を残す可能性のある副作用を意味します。同じ病気に利用される薬が何種類かあった場合、重大な副作用を比較することで、その薬の特徴が見えて、その薬とどう付き合えばよいのかが分かるのではないかというのがこの項目の企画になります。

①抗不整脈薬

一般に抗不整脈薬はボーン・ウイリアムズ分類で4群に分けられます。大まかに説明すると次のようになるでしょう。

1.Ⅰ群:Naチャネル阻害薬

Ⅰ群はNaチャネルとの結合性やKチャネルへの作用の違いからさらに3つに細分類されます。

❶Ⅰa群

(Naチャネルとの解離は中間から比較的遅い。Kチャネルの閉口作用あり):抗不整脈作用が強く、催不整脈作用(逆の作用だが重大な副作用として出現する)もあり。抗コリン作用があるため房室ブロックを起こしにくい利点があるものの口渇、便秘、排尿障害などの特有の副作用の他、膵臓β細胞のKチャネルの閉口作用(インスリン分泌亢進)による低血糖のリスクがある。

❷Ⅰb群

(Naチャネルとの解離は早い。Kチャネルの開口作用あり):Ⅰ群の中では作用は弱めで、上室性不整脈には効果が薄いため心室性不整脈の使用に限定される(例外としてアプリンジンは上室性にも適応あり)。

❸Ⅰc群

(Naチャネルとの解離が遅い。Kチャネルには影響を与えない):Ⅰ群の中では最も長くNaチャネルと結合し、効果も大きい。重大な副作用として催不整脈作用もあり。

2.Ⅱ群:心臓のアドレナリンβ1受容体遮断薬(βブロッカー)

心臓のβ1受容体を遮断して心拍数の減少、興奮伝導を抑制する。Ⅰ群と比べ効果は弱いとされるが、心保護作用が期待でき、臨床的には利用しやすい。

3.Ⅲ群:Kチャネル阻害薬

心室細動にも適応を持ち生命の危険のある不整脈のみに使用される。催不整脈作用もある。Kチャネル阻害以外の作用を併せ持つものが多い。

4.Ⅳ群:Caチャネル拮抗薬

洞結節や房室結節の活動電位発生のきっかけは他の心臓の部位のようなNaチャネルではなく、Caチャネルの開口がきっかけとなるため、Caチャネル拮抗薬は主に心房や上室の不整脈の適応となる。心室不整脈には適応を持たない。(図表1,2で各群の代表的薬剤の重大な副作用を比較してみます)

写真を拡大 [図表1]抗不整脈薬の代表的薬剤と重大な副作用のまとめ
写真を拡大 [図表2]抗不整脈薬の代表的薬剤と重大な副作用のまとめ