幽霊の啜り泣き…?

「ちょっと油断すると、これですよ」と口から小石を出し丈に見せた。

「よくあることでしょ」と当たり前顔で丈は笑った。

丈も料理を二口三口頬張ってビールで流し込んだ後、急に真顔になり話し出した。

「実はウチのホテルなんだけどさぁ、幽霊が出るらしいんだけど、知ってる?」

「いえ、本当ですか」

「五階の角部屋なんだけど、隣の部屋に泊まった客が何人も深夜に女の啜り泣きを聞いているんですよ」

「女性の宿泊客が本当に泣いていただけなんじゃないんですか」

「いや、泣き声を聞いた客は廊下に出て、その泣き声が聞こえてくる部屋番号を調べてフロントに連絡したんです。フロントはその部屋に誰が泊まっているか調べたんですけど、誰も泊まってなかったんです」

「……」

正嗣は思わず丈の話に聞き入ってしまう。

「フロントスタッフも気になったんで、問題の部屋の鍵を持って調べに行ったんだ。でも、部屋の中には誰もいなかった」

「そのスタッフも啜り泣きを聞いたんですか」

「いや、セントラルコントロールの空調が強めに出ていたんで、その音を客が勘違いしたんだろうと思ったらしい。でも、同じように五階の角部屋のすぐ隣に泊まった客から、隣の部屋から女の泣き声が聞こえるというクレームがその後何度も続いたんです」

「その角部屋には普通にお客を入れているんですよね」

「ええ。普通に使っています。金縛りにあったとかいうお客がいたかな。実はさぁ、前に夜間デューティーの時に角部屋の隣の部屋に泊まったんです」

「それで、聞こえました」

「部屋で休む前にフロントで角部屋が空いていることを確認して、ラウンジで景気付けにビールを二杯飲んで一一時過ぎに部屋に入ったんです」

「何が景気付けですか、ただ怖いのを紛らわしただけじゃないんですか」

「一時間くらいテレビを見て、零時を回った頃だったかな、テレビを消して寝ようとしたんです。そしたら、やっぱ聞こえてくるんですよ」

「女の啜り泣き?」

「いや、女の喘ぎ声だった」

「オタクのホテル、そんなに壁が薄いんですか」

「角部屋と反対の隣部屋にアラブ人男性客が泊まっていて、ピーちゃんを連れ込んでたようで」

「壁に耳当てて聞いていたんですか」

「ええ、結構激しかったみたい」

話が違う方向へ流れている。

「それがオチなんですか」