• マニラを訪れる人たち

次の日の朝、九時半ホテル出発と聞いていたので、正嗣は早めに家を出て八時半頃からホテルのラウンジでコーヒーを飲んでいた。前日見かけたツアーの団員の数人はエレベーターから降りてきた時にフィリピンの女の子を連れていた。

自分たちでは女の子を買いに行けないだろうから、ガイドが連れていったのだろう。やはりこの人たちの目的は〈マニラの夜〉なのだろうか。中には玄関先まで女の子を送り、ご丁寧にタクシーに乗せている団員までいる。日本人のこういう行動はなぜか目に付いてしまう。一般のフィリピン人が見れば不快に感じるだろう。

予定通り九時半に一行を乗せたバスはホテルを出発した。タガイタイはマニラから車で一時間半ほど南に行った所にある標高七百メートルの避暑地で、タール湖という美しいカルデラ湖の眺望を楽しむ人気観光コースだ。

タール湖の中には世界一小さな活火山と言われるタール火山が浮かんでいて、外輪山の上に建てられたロッジやヴィラの展望テラスから見下ろすのだが、正に絶景だ。タガイタイへの道すがら、ジープニー工場、竹製のオルガンで有名なラスピニャス教会、パイナップル畑などに立ち寄った。

タール湖の展望テラスのあるタールヴィスタロッジで昼食を取り、カビテ工場へ向かった。昼食を取りお腹が膨れたからなのか、あるいは昨夜の日比友好のお疲れなのか、バスの中ではほとんどの団員が居眠りをしていた。ちゃんと工場を視察してくれるかどうか心配になる。

一時二○分に工場に到着。予定より若干早かったが、門の前にカビテ工場長の竹田がガードマンと一緒に待っていた。まずは一行をレセプションホールへ案内した。そこにはパイプ椅子が二〇脚ほど並べられていた。女性スタッフが冷えた缶入コーラを配り、団員を座らせた。

竹田は用意していたOHPとスライドプロジェクターを使い二○分ほど工場の説明をした。その後工場内の生産ラインを順番にゆっくりと説明しながら見せた。団員は所々で写真を撮った。正嗣は列の一番後ろから一行の視察の様子を窺っていたが、各団員にとって今回のツアーの建前の部分なのでそれぞれ真面目に見てくれているように映った。