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工事費横領の噂「裁判所」のゲーム

どのように解決したらよいのか

さて、この話はどのように解釈すればよいのでしょうか?

私の知らないところで、悪意のある噂を立てられるという点では、【事例4】の怪文書や【事例6】のXX先輩の話とよく似ています。しかし、 この事例がこれらと大きく違うのは、 噂の内容が、工事費の横領という「犯罪の告発」になっているという点です。

「犯罪の告発」という行為のため、告発した側は正義の立場に立つことになります。このため、告発された標的に与えるダメージは、計り知れないものがあります。逆に言うと、この事例は、それだけ【事例4】や【事例6】と比べて、たちが悪いということができるのです。

実はこの事例は「裁判所」といわれるゲームなのです。バーンは、このゲームを「親密さ」をもとにして演じられる「結婚のゲーム」に分類しています。例えば、次のようなケースが当てはまります。

職場で、仕事の進め方についてAさんとBさんの意見が対立し、同僚のXさんが仲裁をしようとします。この場合、Xさんが裁判官役になって、AさんとBさんのどちらが正しいのかを裁くことになります。

あるいは、会社の業務査定でCさんとDさんの業績評価が同点になったが、どうしても上司が順位をつけなければならなくなったとします。この場合では、上司が裁判官になって、どちらが上位かを判断することになります。

こういったケースでは、裁判官役は自分との親密さや自分の価値観だけで判断して、「こちらが正しくて、こちらが悪い」、「こちらが上位で、こちらが下位」といった判定を下すことができるのです。

つまり、裁判官役は、第三者という立場を利用して、どちらかを善、どちらかを悪と自由自在に決めつけることが可能なのです。

もちろん、裁判官役の人のなかには、厳密に両者を評価して、誰もが納得できる裁定を下す人もいるでしょう。

しかし一方で、裁判官役は独善的に、こちらが悪いと断定することも可能なのです。もし、裁判官役が、どちらかに悪意を持っていれば、意図してこちらが悪いと断定することができるという点が、このゲームの特徴なのです。すなわち、第三者の立場だから、どのような判定でも自由に下すことができるという点を利用するわけです。