英国老年医学の母 マージョリ・ウォレン(Marjory Warren)

我が国では、介護保険ができる以前には、特別養護老人ホームへの収容が忌避される傾向がありました。

それは行政による措置ということになるからです。老年痴呆(現在の認知症)に至っては、鍵のかかった畳の大部屋に毛布を持たせて入れるという、人権を全く無視した隔離政策がとられていました。

親を病院に入院させるのは子供にとっては美徳ですが、老人ホームに入れるのは、親を見捨てたことになるという世間の風潮がありました。老人ホームの新築ということがあると、近隣住民は、皆、反対したのです。差別という考えが出てきました。

ところが寝たきり老人や認知症など、ケアを必要とする老人が急速に増大してきました。行政は、ケア、リハビリテーションなどの社会化という基本的概念が欠け、対策がなかったことに気がついたのです。介護保険が導入されてケアの社会化が始まったのは、2000年になってからです。もはや一刻の猶予もなく、対応に迫られてきたのです。

一方、先進国、特に英国ではすぐれたケアの手本がありました。ウォレンという女医が老年ケアの在り方を世界に向けて示したのです。それは100年近くも昔のことでした。