母の壁を打ち破る

りゅう君の後につき合った彼ともすぐ別れ、入職して半年後、同じ運送会社の事務員だった人とつき合うようになった。6歳年上の彼は、私に対して寛大で、過去の自分も含めて受け入れてくれた。一緒にいて、嫌なことは何も考えなくていいような環境を与えてくれた。

彼の母はつき合ってすぐ亡くなったので、彼の父と彼の3人暮らしが始まった。その頃、ようやく安定し始めた母との関係がまたギクシャクし始める。

母が言うには、私は苦労しらずだから、一度1人暮らしをするべきだ、と言うのだ。本当はやっとまともに生き始めた娘を傍で見たかったのかもしれない。

しかし漸く自分の足で歩き始めた私の人生に、例え親と言えども、ズカズカと入ってきて干渉することが許せなかった。自分に必要なことを自ら選択する力が私にはある。いつまでも子ども扱いなのが気に入らなかった。子どもが一段階成長しようとする時、子どもに依存する母親はそれを悪意なく止めようとする。

作家の養老孟司さんがこれを母の壁、と称した。私は妙に納得した。子どもには困難を乗り越えるチャンスや試練を与えてあげないといけないのだ。

困難のたびに母が手助けしていては、いつまでたっても子どもは子どものままだ。私は母の壁にいつも押しつぶされてきた。自分の人生を歩めなかった。もう懲り懲りだ。対話の機会を設けたが、母は納得しなかったので、そのまま家を出た。二度と帰らないと誓った。