ある日はその後通うことになる大学の前で学習塾か何かのビラ配り。またある日は商店街の中でティッシュ配り。このティッシュ配りは楽だった。ビラはもらってくれないから仕事が終わらないが、ティッシュは違う。通りすがりのおばちゃんが、がっぽり持って行ってくれ、配るものがなくなった私は近くのパチンコ屋で時間を潰す。

せっかく稼いだお金がなくなってしまった。楽な仕事も良し悪しだな、なんてのん気に過ごした。1ヶ月間、市外の看護大学で事務をすることもあった。エクセルとかワードとか、そこで使い方を覚えた。そこには育児をしながら学校に通う学生もいて、何だかうらやましかった。

お金を稼ぐことが楽しくなり、私は遅刻せず、まじめに働いていると、自然と評価があがり、長期の仕事を紹介してくれた。隣町の小倉にある運送会社の事務職員だ。制服を支給され、フルタイムで働く。月に19万円! 気分は高給取りのOLだ。

ヒールでコツコツ、満員電車で通いながら、OL姿の自分に酔っていた。仕事では頑張れば頑張るほど評価してくれた。アネキみたいな先輩が、とても丁寧に指導してくれる。まだ高校卒業したばかりの柔らかい頭の私は、スポンジのように仕事を吸収し、覚えていった。仕事もどんどん早くこなせるようになった。

「おまえ、派遣なのにやるなぁ」

同じ事務所にいた課長からかわいがられた。気がつくと正職員で雇われた人よりも仕事が早く、クレームは少なかった。居場所はこうやって作るのか。私は自ら自分の道を切り開いていく楽しみを見いだせるようになった。そして私の人生はやっと「自分の人生」を歩み始める。