俳句・短歌 短歌 2021.11.01 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第22回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 窓際の若葉かげさす湯にひたり 病ひ耐へ来しすぎこし思ふ 湯に馴れぬ体いたわりひたひたと まづ手足より湯をかけ始む 湯浴みしてほてり清しも遠雲の 夕かげ染みし明るさを見つ
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『柴犬回想記 真珠湾の静寂vsワシントンD.C.の喧噪』 【第15回】 坂田 憲治 日本の役所が法案や改正案で好んで使用する「…等」と同じ「subject to」「of course」 〈我輩の違和感〉●「米国の修正を経たる後」と訳されているこの日本語案は明らかに無理がある。subject to という条件は「米国側だけ」ではなく「日米双方」に同時並列に付く条件で時間の後先はない。しかもその条件が「米国側は修正」に対し、「日本側は公式・最終決定」と両国で異なるところに問題がある。これは「日米共に相互に修正条件」とするか「日米共に相互に公式且つ最終決定条件」とするかいずれかにすべ…