俳句・短歌 短歌 2022.08.08 短歌集「蒼龍の如く」より三首 短歌集 蒼龍の如く 【第73回】 泉 朝雄 生涯にわたって詠み続けた心震わすの命の歌。 満州からの引き揚げ、太平洋戦争、広島の原爆……。 厳しいあの時代を生き抜いた著者が 混沌とした世の中で過ごす私たちに伝える魂の叫び。 投下されしは新型爆弾被害不明とのみ声なくひしめく中に聞きをり 伝へ伝へて広島全滅の様知りぬ遮蔽して貨車報告書きゐし 擔架かつぐ者も顔より皮膚が垂れ灼けただれし兵らが貨車に乗り行く 新聞紙の束ひろげてホームに眠る中すでに屍となりしも交る 息あるは皆表情なく横たはり幾日経てなほ煤降るホーム (本文より) この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ おほよそに見て過せども檜ひ葉ばの葉はこの頃小さき実をこもらせつ 利根川の川口を扼やくす岩礁にあがるしぶきは暮れつヽなほ見ゆ 風波は護岸を打ちてとどろけば利根川たまゆら海の如しも
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『ザ・総選挙』 【第22回】 利根川 尊徳 「最初から結果が分かっている事の方が選挙としておかしいもの」武藤は呟いた 誰一人として抜け駆けする事なく「そんな姑息な真似はしません!」と口を揃えたのに対して、与党と野党の候補者は、当初は「私も小選挙区一本で挑みます」と威勢のいい事を口にしていたのだが、マスコミの情勢分析が進むにつれ、「私は折角の有り難い制度ですから使わせて頂く事にします」と小選挙区で日本民主保守党公認候補と当落を争う選挙区のライバル候補者達が、最初は使わないと言っていた重複立候補制を使うと言い出して…