鳩のミステリー・サークル

駅の方から自転車に乗った若い警官がやって来た。向こう側で自転車をおり、押して国道を横切って私のところへ来た。

「ご苦労さまです」

きちんと挙手の礼をする。

「駅前派出所の飯村と申します」

警備士に対してこれほど丁寧な警官も珍しい。先ほどの公園課の小原係長といい、この辺りの公務員は皆この様な人達なのだろうか。

「ご丁寧に恐れ入ります。公園課の依頼で今日から十日間、園内のパトロールをします野原と申します」

私は身分証を示して挨拶した。

「役所の方で警備の人を配置するとの連絡がありました。例の鳩のサークルの件ですね?」

「はい。そのようで」

「自分は現場を見ました」

飯村巡査は私をうながして木製遊具のあるエリアへ行き、小石混じりの固そうな地面を指した。

「丁度ここです。鳩の死骸が九羽、こう頭を内側に向けて綺麗に並べられていました」

「何かミステリー・サークルをつくったという話ですが、犯罪に関与しているとは?」

「自分もその可能性があると思いまして、上申したのですが、こっぴどく叱られました」

基本である地域パトロールを、しっかりやってないから見すごしたのだ。巡回地域を、それこそ野良猫が子を産んだこと迄記録しろ、と言われたのだと。

「完全に自分の失態です。これからは充分に気をつけて担当地域を廻るつもりです。ここへも参りますのでよろしくお願い致します」

また、きちんと挙手の礼をして飯村巡査は戻って行った。まだ警官になって日が浅いのだろう。気持の良い青年なのでくじけず励んでほしい。