専門教育の縮小と教養教育の欠如

人材に投資しない日本の企業世界の動向と比較して、日本は経済規模に比してびっくりするほど人材投資をしていない。

2000年代までは、GDP比0・42%、2010年代まではさらに悪化し、0.23%に下落して、主要国の1/7~1/8にすぎない(図21)。

 

多くの経営者は日本の学校教育には期待していないと言いながら、経営者も人材開発に投下していない。最大のものづくりの革新に必要なリソースである人に投資せず、日本の未来はどうなるのだろうか。

これを逆に見れば、人材育成には大きな伸び代がある、と前向きに考えられる。

内向きになった日本の大企業

2018年6月の日本経済新聞電子版に「経団連、この恐るべき同質集団」という刺激的なタイトルの記事が掲載された。

大企業の総本山である日本経済団体連合会の会長と副会長18名の計19名の経歴を調べ、以下のような「超同質集団」という特徴を指摘している。

1.全員男性で女性はゼロ人

2.全員日本人で外国人はゼロ人

3.一番若い副会長で62歳、50代以下はいない

4.起業家もプロ経営者もいない

5.転職経験がない

2021年になって経団連に初めて女性の副会長が誕生することになった。2以外の同質体制にやっと風穴があけられ始めた日本の企業はリーマンショック後、社員の賃上げや設備投資などしなくなった。

その間、企業の内部留保すなわち利益剰余金は何もしない状況で溜まり続け、特に2010年以降に急増し、現在は250兆円近くに達している(図22)。

 

新設備がなければ、技術者は「改良改善業務で古い工場を維持するだけ」となり、発展途上国から、一層追い上げられることになる。さらに、最近は大企業の技術開発の多くが、関係会社と呼ばれる下請けに丸投げされる事態になりつつある。

すなわち技術開発の外注化である。そして大企業の新人社員の業務は、現場で汗水たらす働きから、関係会社の技術の管理すなわち書類業務に変化している。生まれた赤子が母乳を飲まされず、牛の乳を飲まされている状況に等しい。