このように、欧米では博士学位取得者が政府中枢や民間企業に要職を得て活躍しているのに反して、わが国では博士学位取得者の民間企業等への就職は少なく、企業側が歓迎する「使いやすい学生」として修士学生の就職が有利となって久しい。

このことが理工系学部で大学院(修士課程)進学率の増加に繋がってきたが、この便利さに対して「使いにくい学生」として博士学位取得者を避ける傾向が続いてきた。

今後は、企業に所属しながら博士課程で研究を継続するリカレント学生の増強、産学連携の一環としての在職しながら博士課程進学など、社会人博士課程学生の受け入れが、より活性化されることが望ましい。

米国の大学は博士課程に限らず学生に高度な学力をつけようとする対応が極めて丁寧である。

筆者の後輩で、企業からマサチューセッツ工科大学(MIT)に留学後、MITの教授になったA氏は

「早大とMITから寄付の要請が来るが、どちらの大学に世話になったかと思い返してみると、圧倒的にMITであり、まず寄付はMITにしたい」

と語っていた。米国の大学は寄付の収入が圧倒的に多いと言われているのも、このような大学の面倒見の良さが背景にある。

一方、大隅博士も

「大学も意識を変えないといけない。企業でも活躍できる高度な人材を育てる体制を整える必要がある」

とも語っている。

「世間を知らない教員の指導のもと、常識のない研究者・社会人を生み出している」

との指摘でもある。