第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-1 社会における技術の役割

4. 社会的設備の充実

次に、社会的設備の充実について考えてみます(図表1)。まず、技術は田畑へ水を運ぶ水路の作成、川の氾濫を防ぐ土手の建設、高潮や津波から守る防潮堤の建設、そして山のがけ崩れを防ぐ塀や砂防ダムの建設など、治山・治水から始まりました。こうした生活基盤を作る土木建設は、現代においてもとても重要な技術であり、技術の進歩が続いています。

写真を拡大 [図表1] 社会的設備の充実

道路や橋、トンネル、港、飛行場の建設によって人々の交通が支えられています。さらに、これらを使って実際に人や物を運ぶ車、鉄道、船、航空機が利用されているわけです。生活を支えているのが水道、電気、ガスです。水道は浄水場から上水道、下水道、下水処理施設などの設備が支えています。

電気は発電所から送電線、変圧器を経て家庭に運ばれています。ガスは油田から船で運ばれた後、都市ガスやプロパンガスとして供給されています。そして、電話回線や光通信回線、無線設備など、情報通信設備が整えられてきました。

住宅設備は、あらゆる技術をまとめたものと言ってもよいでしょう。構造材、窓ガラスなどの設備だけでなく、電気設備、ガス設備、情報通信設備、冷暖房設備など、さまざまな機器が備え付けられるようになっています。

学校や公民館、役場、図書館、競技場、劇場、美術館、博物館、音楽堂など、大勢が集まる公共施設が建設されています。これらは快適で、勉学や文化を楽しむ場となっています。

そして、物の生産を行う工場などの設備があります。こうしたいろいろな設備に支えられて、私たちの社会生活が成り立っているのです。

5. 産業活動の対象・手段

産業を支える手段としての技術を見てみます(図表2)。いろいろな物や情報を生産して供給する産業の対象物や手段として技術が使われ、それに従事する人々が収入を得て、生活が成り立っています。人間がそれぞれ仕事を提供して収入を得て、そして今度は他者が生産したり、供給したものを購入したりして、各人の生活が成り立っているのです。

つまり、技術を生産したり、技術を活用したりして労働を提供し、お互いに提供した労働を交換していると見ることができます。その交換しあっている物や情報が大変豊かになっているのです。

写真を拡大 [図表2]産業活動の対象・手段

自動車の生産は、日本において最も大きな産業になりました。自動車を作るためにはその材料の生産、加工技術、自動車を構成するエンジンや駆動部品、フレームやウィンドウ、タイヤ、電子機器、内装パネル材など、さまざまな部品と材料の製作が必要であり、自動車工場における組み立てラインは最後の工程で、それを支える多くの企業がピラミッドのように連携して産業が成り立っています

工場においては、金属材料を削る工作機械や、板材・ビーム材を作ったり、それらをプレスして曲げたり、押し出したりする塑性加工機械、溶接機械、切断する機械、組み立てを行う機械、物品の搬送を行う機械など、さまざまな生産技術にあふれています。これらの機械を生産して供給する企業がたくさん活動しており、そこでたくさんの人が働いています。

農作物を作る際に活用する農業機械や、食物を加工する食品機械も大きな産業です。土木工事を行う建設機械や、鉱山における採掘、運搬を行う鉱山機械や建設機械も世界で活躍しています。

電子機器や情報機器は近年、飛躍的に普及・拡大し、機器更新が頻繁に行われ、競争の激しい産業となりました。これは半導体の性能の向上が著しく、情報の高速伝達が可能となって、情報を扱うソフトウェアがどんどん開発されているからです。

こうした情報通信関係に関わる人の数も急増しています。エネルギー産業は火力エネルギー、水力エネルギー、原子力エネルギー、太陽光エネルギー、風力エネルギーによる発電をはじめ、発電機器の製作、エネルギーの輸送、貯蔵、配送電機器など、産業活動や生活を支える産業です。石油の使用から発生する二酸化炭素による地球温暖化を防ぐために、どのようにエネルギーを獲得、利用していくのか、現代が直面している大きな課題です。

医療機器や薬品の製造、使用に関わる産業もどんどん増えています。日本では急速な高齢化社会が進み、介護や健康機器に関わる産業が大変重要になっています。

このように、人間が仕事をして収入を得る産業活動として見ても、技術を対象あるいは手段としたものがとても多いのです。いかに人間と技術が切っても切れない関係にあるかがわかります。
 

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。