江戸の面影を探して

(1)芝増上寺と徳川家霊廟

町の日常的な風景は常に変わっていきますが、寺院や神社という非日常的な場所は長い年月を経ても余り変わりません。

東京で江戸時代の風景や情緒を発見したければ神社、仏閣を訪ねると良いでしょう。

芝の増上寺は、江戸時代に徳川家の菩提寺として隆盛を極めましたが、今は関東における浄土宗の大本山の地位を占める大きな寺院です。

浜松町駅から増上寺に向かうと、芝大門があります。

ここは昔は増上寺の表門でしたから、隆盛時にはこの大門から東京タワーに至るまでの広大な土地が寺の境内でした。

現在の芝公園も全て増上寺の境内であり、また東京タワーも増上寺の墓地を潰して建設したものだそうです。

また、長い歴史のある寺ですから、境内には貴重な文化的建造物も沢山あったのですが、明治時代の二度の大火と太平洋戦争の空襲で殆ど消失しました。

現在残っているのは、三解脱門と黒門など、ほんの一部です。黒門は増上寺旧方丈門と言い、江戸時代初期に建てられ桃山建築の豪華さがあります。

三解脱門を入って正面に見えるのは、大殿と言い、平成元(1989)年に建立された新しいものです。

この大殿の右手の奧に徳川家霊廟があります。ここには徳川家の代々の将軍の墓があり、墓石ですから消失を免れて往時の姿を留めています。

二代将軍秀忠の正室おごうのお墓、十四代将軍家茂の正室和宮のお墓など、大河ドラマでお馴染みの方々の眠る霊廟ですので参拝者は多いです。

芝増上寺は消失して縮小したと言いましても、東京タワーの展望台から眺めると、一万六千坪の境内は広大であり、そこには慈雲閣、本堂、安国殿、圓光大師堂、光摂殿、鐘楼、経蔵等の数々のお堂が建っていて、さすがに浄土宗の大本山であることを示しています。

訪れたのは丁度、桜が満開の時期で増上寺の境内は、この世の浄土のように明るく感じました。