第二章 道徳と神の存在

「そうやなあ。俺は、一般論として人間が嫌いで信用してない。まだ20年も生きてへんけど、今までに散々裏切られたり、いじめられたりした経験上や。けど、ほんのちょっとかも分からんけど、まともな人がいることに期待したい。こんな俺に宗にも多少似たとこもあると思うねんけど。普段のお前の言うことからすると、きっとそうやろ」

「基本的には否定しいひん。けど、俺は、人間を好きになりたいし信用したいんや。現実を見ると、それが到底できそうにないから、その反動でキツイことも言う。ほんまに、世の中の人間が良くあってほしいと思てんねんで。ほんまに甘いかもしれんけどな」

「そのとおり甘いで。今まで生きてきて世の中を見てみたら、基本的には人間なんて到底信用できひん。お前らみたいなごく例外はおるけどな。裏切られたり、いじめられたりした時には、今度生まれ変わることがあったとしても、人間なんかに生まれたないと思うことさえもあった。

そやけど、そやけどや、こんな世の中にも、たとえ100人か1000人に1人ぐらいの割合かも分からんけど、まともな信用できる人がいてくれると思いたいんや。この世に生まれてきたからには、なんぼ嫌でもこの世の中で生きるしかないんやからな。ほんで、難しいかも分からんけど、俺もその内の一人になれたらええと思うんや。なんぼ、虐められても、裏切られても、惨めな思いをしても、薄汚いことや悪事を働きとうないと思ってる。ほんまに簡単なことやないから、絶対に自信があるとはよう言わんけどな」

と勉が言うと、茂津が受けて話し出した。