退屈の中に見える希望

私の家系、両親、祖父母達、殆どが癌を経験している。父方と母方の祖父は、二人とも数年前に亡くなった。父方の祖父は肝臓癌で、母方の祖父は膵臓癌で亡くなった。母方の祖母は私がまだ子供の頃、心不全で亡くなったが精神病を患っていた。睡眠障害になり、何度も入退院を繰り返した末、静かに眠ったのだ。

父方の祖母は二度乳癌を患った。父親も胃癌、母親も乳癌になっている。きっと私もいずれ癌になるのだろうと思っていたが、まさかこんなに若くして癌になるとは思ってもみなかった。癌というのは生活習慣病とも言われるが、早くても五十歳を過ぎてからなるものだと思っていた。

私はまだ三十代だ。

もちろん身体に悪いとされることばかりしてきたかもしれないが、早過ぎるのではないだろうか。発見されたのはつい最近だ。生理不順であまりにも身体がだるく、今月もなかなか生理が来なかったから産婦人科へ行ってみたのだ。そしてついでのような感じで検査をしたところ、一週間後に通知が来た。即病院へ来るようにとのことだったのでハラハラしながら行ってきた。

手術内容の話をし始める先生を見ていても、実感が湧くわけもない。しかし、どうやら本当のようだ。通知が来た日(正確には届いていた通知の中身を読んだ夜)、私は日本代表のサッカーの試合をテレビで観戦していた。車の中でその通知を見たのだが、軽いギャグのようだった。何の真実味もなく何事もなかったように私は公園へ行き、帰ってきてからもお笑い番組を見て大爆笑していたのだが、急にふと我に返り大泣きし始めたのだ。

何一つ成し遂げていない私が死を迎えるなんてことはまるで理解できないことであった。しかしこれが運命だとしたら、大急ぎで何かをしなければならないと思いながらも、どうしていいのかわからない。先ずは大切な人々に会いに行こうと考えた。もっと皆と色んなことがしたかったと未練がタラタラ湧いてきて、涙は止まらなかったが泣き疲れて少し眠った。夜じゅう泣き続けたのと少々酒が残っていたせいもあり胃がムカムカしていたが、朝一で病院へ行ったのだ。

そして、やはり自覚した。そうか、癌になったかと。