父親について

戦争時期を過ごした父と戦後20年ぐらいたって生まれた私では、生活環境や考え方も違うため、いろいろな対立もありました。父としてはいいと思ったことでも、私にしてみれば迷惑と感じることもありました。

私の父が人間らしく、立派だと思うエピソードを三つご紹介します。

まず一つ目は、私が医院を開業しようとしていた時のことです。私は現在、福井市若杉というところで歯科医院を開業しています。この場所にした理由は、将来的には歯科医師を養成できる医院にしたかったので、せめて福井市内ぐらいで開業しないと都会から戻ってきた先生が勤めたがらないだろうという気持ちと、福井市でも外れに位置し自分の実家の織田に近いので地元の人にも来てもらえるし、実家にも行きやすいという考えからでした。

しかしスムーズに決まったわけではなく、一度断念して鯖江に変えようとしたことがあります。それは、違うところで開業していた先生が、私が予定している場所の近くで新たに開業するということで歯科医師会に手続きをされたためでした。その当時は、他の医院の近くでは開業してはいけないという暗黙の了解があったのです。

しかし私は、自分がこうと決めたら引かないタイプなので、「歯科医師会に入らないでやればいいし、もともとここらは歯科医院の多いところなんだから自分が頑張ればいいんだ」という気持ちでした。それに、この場所を借りるために大変な苦労をしたので、絶対にここで開業するつもりでいました。

しかしある日、父に開業予定地に来るように言われ、行ってみると待っていた父にこう言われたのです。