S君はこの日の夜行バスで東京に帰るのだが、そのバスの出発場所がわからず、京都駅八条口に探しに出向いた。

S君は「夜行バスはもうこりごりだ」という。

昨日にも盛んに愚痴をこぼしていた。こっちへくる時、彼のすぐ後ろの席に変な奴(説明すると長くなるので、ここでは省く)がいて、そいつのお陰でほとんど眠れず、随分と不快な思いもしたらしい。温厚で人がよくおとなしい彼がそうなのだからよほどおかしな奴だったのだろう。

私の場合には、金で時間を買った。一旦ホテルにチェック・インし、いい店はないか再度A家に尋ねた。すると、昔『宝塚』にいたようなオバさん2人がやっている飲み屋があり、わざわざ電話で予約してくれた。

今出川通りから少し引っ込んだ所にあるカウンターのみの店で、最初は私達だけだったが、席は次第に埋まっていった。白米にアジの干物、山芋短冊、モツ煮こみ、湯豆腐等に、2人でビールと熱燗を2本ずつ飲み、今日も満足の夕食だった。

昨夜も今夜も特に京風料理、味というわけではないが、どちらの店もまた京都にきたら立ち寄りたい店である。

S君と別れホテルへと戻ると、今日はこちらにきて初めてとなるひとりきりの夜だ。スポーツ新聞の風俗関係の広告にも気を引かれるが、慣れないことはしない方がいいだろう。

下手をしてガッカリしたりつまらないことに巻きこまれたりするのは、こんな旅先ではより不快なものとなる。

深夜になって、またマッサージを頼む気になる。前日とはまた別のオバサンで、最初から話が弾んだ。私は背も高い方だし、最近では結構肉づきもよくなったし、1回(40分)では(マッサージ)し切れないそうなので、ダブル(2回)にすることにまとまった。

とにかく色々な話をした。母子ほどに年齢が違えば住んでいる場所も違い、勿論今夜初めてついさっき出会ったばかりなのに、まるで旧知の仲のように話しまくった。

2回目も終わりに近づいて、まだ話し続けていた。何だか名残惜しいとなりトリプル(3回)にすることにした。金もないわけじゃなし、それだけオバサンの収入も増えるし、何よりもっと話してみたかった。

もっと年が近ければ尚よかったが、それでも楽しい夜だった。

※本記事は、2020年12月刊行の書籍『旅のかたち 彩りの日本巡礼』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。