そして、その夜、妻・明純と今後の話し合いをした。ずっと仕事を休んでいる二人。しかし、どこかで区切りをつけなければ生きてゆけない。生活の事は息子のヒョウゴもイオリも心配している。明純もまだ、あきらめない、生きていると信じる、と言いつつも、お互い休みの日に捜し続けること、仕事をしながら生活しながら捜し続けることで一致した。

良典は翌週の月曜日から仕事を始めると決めた。その前にもう一度、別なコースで、次の日曜日に溝原朗子に再度同行を依頼した。

明純は、土日祝関係ないシフト制なので、会社と相談して木曜日から働くことにした。たまたま金曜日がシフト休なので、まずリハビリがてら一日。そして、その日、最初に会社に時間を取ってもらい、休んだ謝罪と共に今の状態を説明する、と連絡していた。無事木曜日に仕事を終え、金曜日に体を休めて、明純は土日月仕事だそうだ。

明純が早番で帰った土曜、良典が登山する前日、良典の携帯が鳴った。

「迷った人が、息子さんをみつけました。残念な結果でしたが……」

良典と明純の止まっていた時計が動き出した。