また、ピアスの価値観については、ずっと以前に長期インドに滞在したことがあったが、そこでは、現金を持っていることは危険であり、貴金属に替えて身につけていることが一番安心なため、みんな耳の周りに十数個もの穴を開けてピアスをしている。それが財産管理の最も安全な方法なんだということだった。

父親が骨董商を営んでおり、世界を駆け回っていることもあって、異文化感覚にあふれているように感じられた。

これまでの経緯を踏まえて、できる限り許してもらえるように職員会議に臨む旨を伝えたところ、快諾していただき、家庭訪問を終えた。

翌々日の職員会議では、まず、家庭訪問した時の話をし、保護者の意向も踏まえて、「学校にはピアスを着けてこない。穴がふさがらないようにするための芯だけのものは許す」ということではどうか、という提案をした。

保護者の意向ということはかなり効いたようで、その方向で話が進んだ。そして、穴がふさがらないように安定するのにはどれくらいかかるのかという議論になり、養護教諭の3カ月ほどで安定し、その後はふさがらなくなるとの見解により、3カ月間は芯だけのものを着けてくることは許すが、それ以降は許さないということで合意した。そして、そうしたことが守られなかった場合には、即座に全て無しということが付け加えられた。

その日のうちにT男に伝えた。諸手を挙げて喜んだという印象はないが、一応、ホッとしたといった空気が流れたように感じられた。むしろ「え、それでいいんですか……?」といったキョトンとした表情をしたようにも思われた。ホッとしたのは、私だったのかもしれない。