この日、家庭訪問し、母親と面談をした。

家へ行くと、当初、大変恐縮した様子で、「本当にあのバカ息子は、『ピアスを取って、学校に行け』って言うんですけど、全然聞かなくて」と切り出された。

私の方からは、今のT男にとっては一番大切なものであることと、小学生の時に初めてピアスの穴を空けたのは、お母さんだったわけで、そうした母親の価値観を完全否定されることへの抵抗は、当然の心の動きであり、むしろ、大切なのではないかという旨のことを話した。そうしたところ、母親は、最初に切り出した時は学校に歩調を合わせるために無理をしているかのように、元気に大きな声を張り上げて話されたが、私の話を受けてご自身の考えを素直に述べて良いということが伝わったからか、落ち着いた口調へと変わり、少なくとも学校主導からT男や家庭の立ち位置へと戻って話されるようになった。

ずぼらな性格のT男が、毎日丁寧に薬を塗って手入れをしたり、朝、学校へ行く前には芯だけのものに着け替えて、帰宅するとまたピアスを着けて、と面倒臭がらずにせっせと一生懸命やっていて、本当に感心するくらい大事にしているということだった。