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Ⅲ 改善に向けての模索

まず3人が向かったのは加工工場であった。

今までほとんど見掛けなかった3人の登場に作業者は何事かと不思議な顔をしていた。加工工場では、ステンレスのコイルから長方形の板をプレスで連続して打ち抜いている。作業者は切断されたプレートを50枚ずつ束にしてプラスチックケースに入れている。

プレスのスピードは速く、本日の作業は来週使用する分を生産していた。切断されたプレートは、ガチャン、ガチャンと規則正しい音を立てている数台のプレスにより、穴が開けられ折り曲げられていた。

作業者は材料(プレート)をプレスの金型の上に載せ、両手でスイッチボタンを押し、加工された部品を取り出して金網の篭に順序よく並べている。

篭に入れられた部品は加工油が付着しているため、洗浄工程に行く。この工程は篭ごと洗浄装置に投入され、約10分後に洗浄が終わって装置から出てくる。

この作業は午前中に当日洗浄する部品の篭を準備し、午後から洗浄装置に投入され、夕方には作業が終了する。洗浄済みの篭は洗浄装置のうしろに並べられている。

洗浄済みの篭の中には4~5日前のものもいくつか見受けられた。加工係の最終工程は、プレス加工のときにできたバリの除去である。洗浄済みの篭の中から当日の作業の篭を探し作業場まで台車に載せて運ぶ。バリ取りは一つずつヤスリで丁寧に取り除き、プラスチックケースに入れて組立工場まで運ぶ。

一同が次に向かったのは基盤製造工場であった。工場内に入るとまず目の前に大きな自動表面実装装置(SMT)が四基設置されていて、高速で正確に基盤の上にチップを装着している。

チップは予め用意されているリールまたはトレーフィーダーからSMTに供給される。各ラインにはオペレーターが1名ずつ配置されて、電子部品の取り替え(段取り替え)やチョコ停(機械が何らかのトラブルで短時間停止すること)などの対応に当たっている。

SMTから出てきた基盤は専用のトレーに自動装入されている。しかし全てがこのSMTで完了するわけではなく、人の手によってチップを挿入する『手挿入』という作業がある。

手挿入ラインは2ラインあり、1ラインにつき3~4人(基盤によって人数は変えている)の作業者がコンベアの脇に座って張り付いている。先頭の作業者が専用トレーから基盤を取り出し、基盤を台座にセットしてベルトコンベアの上に置く。

その後トレーが自分の前に来たとき、自分の持ち分のチップを差し込む。手挿入された基盤は、自動半田装置に送られる。自動半田装置の投入口の高さはコンベアの高さに合わせてあり、作業者の座り作業をする高さになっている。

自動半田装置から出てきた基盤の裏側には、チップを差し込んだときの〝チップの足〟が飛び出ているために『足カット』工程があり、1ライン1名の作業者が対応している。足カットされた基盤は目視検査を行って合格品が最終の機能検査を受ける。