ブレークスルーの考え方

第1日目の講義が始まった。

〈原田〉皆さんは日常の業務の中で効率よくそして目標の成果を生み出すために、いろいろな手法─管理技術を活用していると思います。

代表的な管理技術として生産技術IE(Industrial Engineering)、品質管理QC(Quality Control)、価値工学VE(Value Engineering)というものがあることは既にご存じのことと思います。

この三つの管理技術は大変有効なものであることは過去の歴史が証明している通りです。今回はこれらの説明は割愛させて頂きます。

そして、この三つに割り込んできたのが今回のテーマとなっている〝ブレークスルー(Break Through)〟の考え方で、1990年代の前半に、盛んに研究され実務にも応用されました。

しかしその後話題に上ることも少なく静かに潜行していたようです。おそらく「ブレークスルー」の考え方が、VEの理論に非常に近かったこと、IEやQCの考え方にも取り入れられていたことにあったのではないかと思います。

もちろん「ブレークスルー」の考え方には、VEにはないユニークな特徴もあります。

小松電子工業の山田技術部長は、三つの管理技術について言葉としては聴いたことがあったが、実際に社内で活用しているのは小集団活動を中心に「QC」だけであった。

「ブレークスルー」についてはその内容についてほとんど無知といえる状況であった。経営企画室の長田課長はじめ他の4名もほぼ同じような状況であった。講師の原田は続けた。

〈原田〉さて、『ブレークスルー』とはどういう意味でしょうか。

『ブレーク』を訳すと『壊す』『切り開く』などの意味があります。次に『スルー』はどうでしょう。『通過する』『突破する』などの意味があります。

それでは『ブレークスルー』と続けるとどんな意味になるでしょうか。

○困難な障害を突破すること

○行き詰まりの状態を打開すること

などが挙げられます。先ほど演習課題のターゲットを利益2倍にいたしました。これはまさにブレークスルーの意味するところの『現状突破』のステージに立ったことになります。