「まず、お前は古いものばかり尊重していた。そのせいで新しいものが好まれる人たちに仲間外れにされた。それにお前は結婚をしていないばかりか、人生で一度も友達ができなかったではないか。

そして子供の時から、一人の時も遊ぶことなどは一切せずに勉強するか本を読んでばかりいた。それ以外の時間は、人生について悩むのだ。まあ少し勉強するくらいは良いことだが、お前の人生はつまらなすぎではないか? 青春時代でさえ、同じような生活をしていたのだぞ? 何もかも無駄な時間だったのだよ」

「友達がいなくてなにが悪い。結婚をしなくてなにが悪い。人生について悩んで何が悪いんだ。悪魔の言うことに耳は貸さないぞ」

「一人ではできないこともみんなと力を合わせればできる。なんと美しいことではないか」

「……そんなことは……」

「結婚をしないと人類は滅んでいくぞ。だから結婚をしない者は義務を果たさん者だ」

「……」

「そもそも、そんなことはあまり考えずに今が楽しければそれで良いではないか。お前も人生で一度くらい思ったのではないか?今を楽しんでいる人がうらやましいと」

「私は……私の人生はなんだったのだ」

「お前は今から生まれ変わる。異論はないな? お前が死んでからしばらく経って生まれる坂本龍馬という人物に生まれ変わる」

「坂本龍馬?」

「そうだ。そしてお前は前世とは真逆の人生を送るのだ。金を好きになり、女を好み、新しいものを好む。可能であれば、前世のお前が好きだった政治を変えてしまえ。新しい日本を作ってしまえ。どうだ? 夢があるだろう? 考えただけでわくわくしてくるだろう? お前の才能ならできるかもしれないぞ」

天保六年(一八三五)十一月十五日、現在の高知県である土佐国の土佐藩郷士坂本家で龍馬誕生。

家はもともと城下で有名な豪商才谷屋の分家で、たいそう裕福であった。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。