明日、明日、明日

創世記

神は最初に、何もない世界に太陽を造った。しかし世界にはまだ神という言葉しかなかったので、太陽という言葉を造るまでそれを神と呼ぶことにした。次に、神は一日を昼と夜に分けてそれも神と呼んだ。大空を造り、地と海を造り、草や木を造り、季節や年を造り、生き物を造り、それらすべてを神と呼んだ。

神は、これらの仕事を六日で終わらせ、七日目は安息した。そして神はその日を聖別した。最後に、神は自分に似せた人間を土の塵で造り、それを神と呼んだ。そして神は人間が自分と同じくらいの力を持ったら、神の代わりにこの世界を半分だけ支配させることにした。

神の力は大きく分けて三つあった。一つ目はすべてを創造した不思議な力である。人間が持つと、これは自然科学という。

二つ目は造った世界が永遠に続くように、生態系のバランスを保つよう調整できる力である。人間が持つと、これは政治という。

三つ目はこれらの力を間違って使わないようになる正しい心である。人間が持つと、これは文学という。

これらの力がどれか一つでも欠けてしまったら、世界を支配することはできないのだ。特に、文学の力が欠けてしまうと人類は醜い戦争をして、絶滅してしまうのだ。

神は自分の造った人間を楽園へ連れて行き、火というものは危ないから使わないように言った。神は人間を助けるものを造ろうと、人間のあばら骨の一部を抜き取り、それで女を造った。神は言った。

「男の一部から女を造ったので女の能力は男より劣ってしまう。男は女を差別し、女は滅んでしまうだろう」

神は女に男は持っていない未知なる能力と、子供を産む能力を与えた。

「これで女が能力を発揮するまでにどんなに差別されても人類の半分は女でいるだろう」

と神は言った。

ある日、蛇という賢い生き物が女に「便利だから」と言って、火の使い方を教えた。そして、女は男に火の使い方を教えた。二人ともまだ正しいことと間違っていることの区別がつかなかったので、神の忠告を聞かなかった。すると煙を見て人間が火を使ったことを知った神は二人の前に現れた。

「なぜ火を使っているのだ」
と神は男に訊いた。男は
「女から火の使い方を教えてもらったからです」
と答えた。

「なぜそんなことをしたのだ」
と神は女に訊いた。女は
「大蛇にだまされて火を使ってしまいました」
と答えた。

神は二人が火を使ったことを怒り、そして、罰として蛇は一晩眠るとその前の記憶をすっかり忘れてしまうようにして、女は子を産むときに苦しむようになり、男は死ぬまで食べ物を手に入れるのに苦しむようになった。

さらに火の使い方を間違えて、楽園が火事になるといけないので二人を楽園から追放した。楽園から追放された次の日、人間は「正しいということ」を覚えた。

そしてその次の日、人間は罪悪感を覚えた。そしてそのまた翌日、人間は自分が正しいと思わないことをする人を、攻撃することを覚えた。

楽園から追放されてから月日が経ち、女はカインを産み、次にその弟のアベルを産んだ。アベルは羊を飼って、カインは土を耕して生活した。

ある日、カインとアベルは神への捧げものを持ってきた。神はアベルの捧げものは気に入ったが、カインの捧げものは気に入らなかった。カインはとても悔しかった。カインは神のいないところでアベルを殴って気絶させ、火で燃やしてしまった。アベルは塵に戻った。

神はカインにアベルがどこにいるのか訊いたが、カインは知らないふりをした。しかし神はすべてがお見通しだった。神は怒った。するとカインは言った。

「なぜ動物が動物を殺すのは良いのに人間が人間を殺すのはいけないのですか。私は悪くありません」

すると神は言った。

「ではなぜお前は嘘をついたのだ。お前は自分が悪いことをしたということをわかっているだろう」

カインは黙ってしまった。カインは罰としてこの土地から追い出された。ただし、神はカインに出会う者が彼を殺さないようにしるしをつけた。

それから何千年も経って、人間が多くなった時、人間は醜い戦争を始めた。神はそれを見て人間に失望し、人間に与えた火を洪水で消してしまおうと決心した。しかし神は、ノアとノアの家族だけは神を信じていたので、救うことにした。

神はノアに洪水を起こすから、木の箱舟を造るように言った。そしてすべての生き物の雄と雌を一匹ずつ箱舟に乗せるように言った。ノアは神の言うとおりにした。

ノアが箱舟を造り終わってから七日が過ぎて、地上には雨が降った。その雨は四十日間休むことなく降り続いて、地上には洪水が起こった。そして、地上の生き物はすべて死んだ。

洪水が終わってから、ノアは神に言った。

「私たちはもう火を使いません。火のせいで私たち以外の人間は滅んでしまいました」

しかし神は言った。

「いいや。これからも火を使いなさい。使い方を間違えなければ美しいものなのだから。あの日、人間は火を使うことを覚えた。その時から人間は幸せになって間違ったことをするよりも、不幸になっても正しいことをする生き方を選んだのだ」

ノアたちが箱舟から出ると、四十日ぶりの晴れだった。

※本記事は、2020年2月刊行の書籍『令和晩年』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。