そして、彼らは色々考えた末に、先ず私たち自身が一応の事実関係について、ここを取り仕切る現場監督の人に伝えたほうが自然でいいと私たちに勧めてくれたのである。直ちに私たちは、現場で働いているすべての関係者に問い合わせて欲しい、とその責任者にお願いしたところ、その翌日、結果的にそのような事実はないとのことであった。それはそもそも当然のことだった。

しかし彼は現場のすべての責務を負っているために、近隣の住民に対してその事実を伝えて協力を要請して回ってくれた。その直後のことである、近くに住む一人の農婦がその朝早く畑に行こうと、通りがかった自分の畑に隣接している畑の入り口の中で、白いビニールで覆われた一つの石の塊のような物が風でめくれるようになって見えていると告げてきたのである。

私たちがすぐに駆けつけて見ると、それらは正に無くなっていた当の石臼だった。それはたぶん彼女がそこを通りがかった時、偶然、ひとしきり吹いた強い風でいくつかあるうちの一つを覆っていたビニールの布がめくれて露わになったのだと思われた。

当然その畑の持ち主は知れていた。それは思いがけずまさかの出来事だった。近すぎたのである。しかも紛失した事実はすでに当局に連絡済みになっていたのだ。私たちはその後に生じるかもしれない様々な悩みが広がり慌てた。私たちはできる限り表に出ないように努めたが、その直後にそれは解消されることとなった。

その時、火消し役となった人物がいたのである。彼はいわゆる長老で、近くに住んでいた元棟梁でもあった人だが、その事実を知った時、自ら私たちの仲介に入って、隠密の内に示談を勧めてくれたのである。