アクションの優先度と快不快の強度

記憶と快不快の情報がセットになっていることで何が起こっているか。

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将来予測される不快(危険)を回避し、あるいは、快を実現するためのアクションを起こすトリガーとして、しかもアクションの優先度の決定に、快不快の強度情報が使われているということである。

図2:快不快ラベルとアクション優先度の例

病院の方に行くことに伴う強い不快感は、対応の優先度が高く、そっちに行くのを回避すべく号泣する、というアクションのトリガーになっている。

また、合唱の心地良さのレベルも高いので、本書執筆中のバックグラウンドミュージックに、アカペラ合唱曲を流すアクションの優先度は高い。

一方、三角形に、痛い、という若干の不快ラベルが付いてはいるものの、実質優先度ゼロで、家の中から三角形のものをすべて排除する、といったアクションのトリガーにはならない。

なお、快不快の強度には、リーズナブルに優先度処理できる範囲がある。麻薬の快から逃れるのは困難で、生活が破綻してしまうこと。目を覆いたくなる悲劇はトラウマになり、長い間それに捉えられてしまうことは広く知られている。

世界像の拡大

ところで、パターンの編み込みは、どんな物事から始まるか。

まずは、生命維持に関わることだ。

生まれると、母親や周囲の人とのやりとりの中で、まず食べることに関連した動作(例:肯定・否定の表現、満足・不満足の表現、掴んで口に入れる手や口の動き)、言葉(例:おっぱい、まんま、お腹空いた、美味しい)、ルール(例:これを噛んではいけない)が、相互に関連付けられながら、また、快不快のラベルと共に編み込まれる。

そして、生存に必要な諸々の物事を編み込みながら、徐々に世界を広げて行く。また、世界を広げて行く過程で、自分と周囲の人とは、ルールを指示する・ルールを守らされるという違いがあること、身体が共通でないこと、呼ばれ方(名前)が違うことなどから、自我他我(私とあなた)の区別も成立する。