メタトロン

「われはメタトロンである。フォール、物事をはっきりさせておくために、話を『今ここ』に戻そう。物事を一直線に考えては、バランスに欠けてしまう。両端は極端にちがうからだ。原因と結果、始めと終わり、プラスとマイナスのようにね。

一直線でない瞬間とは、たった一つしかない。プラス・マイナス・ゼロだ。それが今という瞬間だ。永遠にバランスがとれていて、永遠に存在していて、永遠にすべての最小限であり最大限の瞬間だ。だから、この至福の瞬間を楽しみなさい。それがお前に与えられたすべてであり、それしかできないからだ。

力はそれが秘める可能性の中にある。

可能性は力そのものの中にある。

選択の瞬間を、あたりまえと思わずに、意識して生きなさい。

今という瞬間は、エネルギーの源であり、世界を変えるものだ。

ゼロが数学の今ここ(ナウ・モーメント)であるように、『今』は創造の瞬間なのだ。

選択の瞬間、神が選ばれた瞬間。

これらの言葉を伝えなさい」

フォールの頭の中はぐるぐる回っていました。「ゼロは数学の今ここ」だって? 彼の頭は悲鳴をあげていました。「一体全体どういう意味? 彼はどうしてそんなことをぼくに言ったのかしら? 彼はなんて言ったんだっけ……物事をはっきりさせるためにとかなんとか言ったけど、それって冗談?」

天使はフォールの独り言を聞いていたようでした。そしてもっと優しい声で、こう言いました。

「フォール、わからないことを書きとめるというのは簡単なことではない。今は、お前が訊いているから、それに答えることにしよう。そうだ。言った通り、ゼロは数学の『今ここ』だ。

お前が選んだ、お前のエネルギーの『今ここ』にいることの重要性を考えてごらん。

そこが、エネルギーと可能性の在る場所だ。それが、お前の計算の根拠であるゼロが持っているエネルギーだ。可能性のエネルギー、可能性の次元だ。ゼロには、過去から未来へと、また未来から過去へと移る特性がある。このことを数学の頭で考えてごらん。ゼロそれ自体には、ものすごい調整のエネルギーがある。ゼロは『今ここ』なのだ」