トランスフォーメーション(変容)の天使

残された沈黙は、もどかしいものでした。フォールは圧倒され、考えをまとめることができませんでした。「あの最後の言葉で、天使は何を言いたかったんだろう? 次の段階に飛び込めという意味なんだろうか?」窓の外に目をやりましたが、彼の頭は疑問でいっぱいでした。「ぼくは、いったい何を言われたんだろう? 『救いの手を差し伸べなさい』って?? 誰に向かって??」

すると、嬉しそうな美しい天使の声が、フォールの頭に響いてきました。

「フォール!」喜びに溢れた天使エムの声でした。「フォール、準備ができたって? 人助けする気持ちになった?」

「準備?? いや、いや、まだですけど、もういいということは決してないんですけど、でも、誰かを助けられるなら、もちろん、喜んで……せめて、ベストを尽くしますけど」そう言って、一息ついて、フォールは尋ねました。「でも、エムさま、誰に救いの手を差し伸べればいいの?」

「死者たちだ、フォール」天使は平然と答えました。フォールは殆どベッドから宙返りしそうでした。「なに?! 死者たち? 死者たちだって??? また、冗談ですか?」

「いや、本気だよ。フォール、お前を心から誇りに思うよ。心配しなさんな、これは一緒にやるのだから」

フォールの口はポカンと開いて、目玉は飛び出しそうでした。「……『これは』……? 『これ』って??? エムさま『これは』って、どういう意味?」

「魂の回復とはね、必ずしもお前の傷ついた、失われた部分を助けるだけではないのだ。失われた魂を助けることでもあるのだよ」フォールは不安げにつぶやきました。「失われた……魂……? あの……幽霊のこと??」

「そうだね、彼らは『さまよえる魂』とも呼ばれている。あまりにも自分の肉体にしがみついていて、この世の痕跡を手放そうとせず、行くべき高い次元にたどり着けない魂のことだ。それは、死後数週間のこともあれば、数か月、数年に及ぶこともある。理由はただ単に、自分でわかっていなかったり、死後の世界(永遠のいのち)を信じていなかったり、あるいはまた、誰かに強い恨みを持っていて、心が地上に縛り付けられていたりするためだ」

フォールは、信じられないといった面持ちで、嗚咽のようなため息を漏らしながら、聴いていました。

天使は、何事もなかったかのように続けました。「そのために、彼らは中途半端な状態、つまり、低いエセリックな次元(地球に近い次元)から抜け出せずにいる。中には、自分が死んでいることに気づいていない魂もある。彼らを導いてやらなければならない。彼らは回復されるのを待っている。だが、彼らに最も必要なのは理解されることだ。彼らはあわれみを求めているのだ」

かすかな呻きがフォールの口から洩れました……いったい自分はどんなことに巻き込まれていくんだろう……? 天使は、なおも続けました。