彼女は制服から今の私服になり、髪型もショートに変えていたので大人な別人のようにも見えたが、くりくりした目と総じて可愛らしい面影はそのままだ。

むしろいつも自然のなすがままに委ねているような僕は、制服だろうが私服だろうがおそらく以前と変わっていない。

「京都に来てたの?」

「なんとか京史大に通りまして」

「学部は?」

「農です」

やはり同郷の人は安心するのか、高校時代にはそんなに話したことがなくても、県外で出会うとなんとはなしに気軽に話すことができる。

彼女は現役生なので、僕より一学年上になる。でもそれも関係ない。

「家近いの?」

「その通りを左に行ってすぐです」

「私は逆方向だけど、近いね」

「近いね」、

そう言われてなんだかわからないけど嬉しくなる。でも、ちょっと前には春田恵美にドキドキしたばかりなのに、全然違うタイプの木下にも同じように反応してしまうとは、と節操のない自分に呆れてしまう。

メールアドレスを交換して、「今度ご飯行こうよ」と言って別れた。

その笑顔が写真のように頭の中に焼き付けられる。なんだまったく。そして僕ごときに言ってくれたその言葉も社交辞令だろうけれど、やはり嬉しいものは嬉しいのだ。

浮かれた僕は、タイトルだけ見て新刊の文芸書を一冊買った。

でも帰り道に思う。たぶんこれはしばらく読まずに、じりじりと本棚の片隅に寄りついて落ち着くんだろうなと。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『桜舞う春に、きみと歩く』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。