翌日、二人は王に勧められ、この城にあるカジノへと向かった。ここにはスロット、ブラックジャック、バカラ、ルーレットなどありとあらゆるカジノゲームが揃い、多くの人で賑わっている。タクは初めてのカジノに興奮し、珍しく子供のようにワクワクしていた。しかしミコトは、あたりを警戒していた。昨日の男達の話が気になっていたのだ。

しばらくすると場内が急に騒がしくなり、拍手喝采がわき上がった。タクの周りに人だかりが出来ている。何と! タクはジャックポットを当てたらしい。

「ミコト! やったぜ!」

タクがミコトに右手をあげて合図した。ミコトが喜んでタクに駆け寄ろうとした、その時だ! 数人の警備員達がカジノ会場になだれ込み、全員でタクを取り囲んだ!

「お前! インチキだな!! 大人しくしろ!」

そう一人が叫ぶと、警備員達はタクの肩を押さえつけた。さすがのタクも、この人数では身動きがとれない。このわずかな時間で一体何が起こったのか、タクには全く分からなかった。

(はめられた!)

ミコトはとっさに全てを把握した。

「こっちへ来い! 牢獄に入れてやる!」

警備員達は、抵抗するタクを無理やり連れて行こうとしている。その時ミコトの目に、怪しい一人の男の姿が映った。

「待ちなさい! タクさんを連れて行くなら、この男の命はないわよ!」

ミコトは、その場から立ち去ろうとしていた怪しい男の首を絞めつけ、ナイフを突きつけていた。警備員達は一瞬ひるんだが、すぐに大声をあげて笑いだした。

「そんな男の命など、いくらでもくれてやるわ!」

するとミコトは、男の首をさらにグイッと締め上げた。

「そんな男? よくそんなことが言えるわね! この男が誰だか分かってるの⁉」

ミコトは男の帽子とマスクを荒々しく外すと、その顔がよく見えるように、警備員達の方へ突き出した。

「お、王様!?」