花とおじさん:第二話

さあ、今日はクリスマスイブ。昨日買ってきたモミの木に飾り付けを始めた頃、高津は仕事に出かけた。

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♫私はあなたの、お部屋の中で、一生懸命咲いて慰めてあげるわ。どうせ短い私の命、おじさん見てて終わるまで♪

そこまで歌ったところで我に返った。あのおじさんを巻き込んではいけない。身の上話はしたけど、私の心臓の事はほとんど話してない。もし、ここで発作が起きるとおじさんにとても迷惑かけてしまう。

それに冷えきったおじさんを温めてあげようと思ったけど、昨日、手を握られた。あの人、おじさんのくせにものすごく純粋でまじめな人だから、私に手を出せずにいるんだ。実は、逆におじさんを苦しめる結果になるのかもしれない。

ごめんなさい。私そんなつもりはないの。おじさんに対してとり返しがつかない事をしてるのかもしれない。もう実家に帰らなきゃ。あっ、この状況に似た民話〝鶴の恩返し〟の中で〝つう〟はセックスしたのだろうか?

あの人は鶴で私は人間だから違うかもしれないけど、とりあえず図書館へ行って調べてこよう。そして、華奈が着替えて出かけようとした瞬間、携帯が鳴った。声の主は、実家の工場で働いていた写植の職人の留さんだった。

話の内容は、未払いの給料を払えという事だ。留さんは華奈が赤ん坊の頃からとても可愛がってくれた働き者だった。印刷会社が規模を縮少し続けても最後まで残ってくれた人だったが、口調はその頃と違ってとても荒かった。

弁護士に任せていたけれど、自分がやらなければならない事はこれから帰って山ほどある。それを考えただけで頭が混乱してきた。

その頃、高津は仕事中だった。今日も朝から怒鳴られっぱなしだが、花ちゃんの事を考えると気持ちがはずんだ。今日こそ告白しよう。昨日、花ちゃんは手を握り返してきたぞ。やっぱり俺の事が好きなんだ。そうに違いない。勘違いなんかじゃない。

何て言おうかな。恥ずかしいな。それにしても、きのう花ちゃんが外出したすきにバッグをあさって見つけたパンツかぶっちゃったもんなー。あんなかわいいパンツはいているんだな。

そんなとこ見られたら、花ちゃんに、軽蔑されて嫌われちゃうんだろうなー。愛の告白なんて初めてだから照れるなー。これから帰るまでにゆっくり考えようと一人で盛り上がっていた。華奈は、留さんからの電話を切った後、今後の自分に不安がよぎった。